ぼくは、地元の大阪を離れたくなかったのだけれど、就職して3年で、恐れていた転勤の辞令が出てしまったのだ。
そのまま勤務していれば、出世も、もしかしたらしていたのかもしれない。
営業の拠点を大阪支店と東京支店を中心として回っていたので、出張はそれなりにはあった。
ぼくは名古屋とか、浜松辺りの下請けさんを主に顧客としていたから。
でも、東京は遠いよなー。
まだまだ学生時代のツレとも遊んでるし、それなりに女友達もいる。
迷いに迷って、転勤を断ることにした。
甘かった・・・。
転勤を断ったぼくは、会社からだけでなく、同期からも敬遠されるようになってしまった。
これって、辞めろ、的な雰囲気だよな。
何度も転勤するのは良くないだろうけれど、自分に合った仕事を探すには、今が考えときなのかも?
自分に与えた逃げ道。
ぼくは切りよく3年勤め、移動の時期をきっかけに退職したのだった。
それから、自分に何が出来るかをたくさん探した。
ハローワークに通って2週間ちょっと。1件の求人が気になった。
探偵会社が求人?
その場で面接の申しこみをせず、家に帰ってからインターネットで検索してみた。
そこには、“地元での調査はおまかせください”とあったのだ。
地元密着の仕事なら、大好きな大阪を離れなくても良いのでは?そんな安易な考えから、探偵への就職を考え始めたのだった。
翌日、面接の依頼をしたときには、探偵に出張があるとは思いもしなかった。
っていうか、普通はあまり、ないらしいのだけれど・・・。
東京までは遠くない、名古屋。
名古屋なら新幹線で1時間。
アーバン特急でも2時間で到着してしまうのだけれど。
商社のときとは違い、大きな探偵事務所なので、名古屋までの交通費も領収書をもらい、実費分きっちり出るだけなのだ。もちろん、出張手当もない。
こんなことなら、商社のときの出張の方が、名古屋の探偵仕事より、はるかにマシだったような気もするが。
いまさら、そんなことも言ってられない。
当分は、自分の就職履歴のためにも、勤めておかなければ、良くないことくらいわかっている。
しかも、ハローワークからの求人でもあるので、ちょっとした履歴でも残ってしまう可能性があるのだから。
ぼくは泣く泣く、出張と厳しい仕事、それに、商社のときを上回る名古屋のわがまま探偵経営者に耐え、悩まされることになるのだった。
ちなみに、ぼくに名古屋出張を命じるようになったのが、ただ単に、仕事で行ったことのあると聞いたから、という単純なものだった。
こんなことなら、余計なこと、言うんじゃなかったなー。 |